本年度はGSTM1を強発現させた白血病細胞株を用いて、GSTM1がグルココルチコイドによるアポトーシスを著しく抑制する機序について検討を行った。 GSTM1過剰発現細胞において、グルココルチコイド刺激によるp38-mitogen activated protein kinase(MAPK)経路のリン酸化の阻害を証明した。更に、p38-MAPKのリン酸化抑制により、通常はその下流で活性化され、グルココルチコイドによるアポトーシスのkey moleculeであるBimのリン酸化の抑制も経時的におこることが確認された。これらの結果から、GSTM1はそのキナーゼ活性を調節する分子として、白血病細胞においてはアポトーシスを抑制する働きを有していることが判明した。これらの作用が内在性の発現レベルでもおこりうるか、RNA干渉実験を用いて、数種類の白血病細胞で検討を行った。内在性にGSTM1を発現している細胞では、その発現を減少させることで、グルココルチコイドによるアポトーシスが亢進することが認められた。 以上より、GSTM1は白血病細胞においてはその発現が過剰発現系のみならず、内在性の発現レベルにおいてもグルココルチコイドによるアポトーシスを抑制していることを見出した。
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