現在学校で行われている喫煙防止教育は、生徒全体に一律に行われるポピュレーションアプローチが主流であり、先行研究では知識などの向上はみられるものの喫煙行動の変化はほとんど報告されていない。一方、喫煙者や喫煙経験者といったリスクの高い生徒に対するアプローチは個別的な生徒指導がほとんどであり、再喫煙者も多い。そこで本研究は、生徒の喫煙に関するリスク状況が多様となる高校生を対象に生徒全体への啓発を目的としたポピュレーションアプローチと将来喫煙のリスクに応じたリスク別アプローチを実施し、リスク別に効果を評価することで高等学校での効果的な喫煙防止教育について検討することを目的とした。 対象は高校1年生747名である。まず質問紙調査により将来喫煙のリスク分類による特徴の分析を行った。さらにポピュレーションアプローチとリスク別アプローチから成る喫煙防止教育プログラムを段階的に実施しリスク分類による教育の評価を行った。 結果、ポピュレーションアプローチと将来喫煙のリスクに応じたリスク別アプローチを段階的に行う本プログラムは、将来喫煙のリスクが高い対象者に対し行動面および知識、認識面で効果が確認された。従来のポピュレーションアプローチ単独で行われる喫煙防止教育では得にくかった喫煙行動に対する効果が確認されたことは意義深い。また、本プログラムは、これまで健康教育としてアプローチすることが難しかったリスクの高い生徒に対しても授業等の中でリスクに応じたアプローチできること、養護教諭などが予防的なアプローチとして実施しやすいことから、高等学校のような将来喫煙のリスクが多様な集団への支援方法として有効である。また、従来の喫煙防止プログラムに比べ比較的短時間で実施できることやスライドなどの利用により導入が容易であり活用性が高いといえる。
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