研究概要 |
臍帯血移植後の腫瘍細胞に対する免疫反応を検討するために、成人T細胞性白血病(ATL)細胞を抗原提示細胞とし、3名のATL患者の末梢血単核球を刺激してATL反応性T細胞の誘導を試みた。いずれの患者も臨床上抗腫瘍効果が認められたものの、ATL細胞に細胞傷害性を示すT細胞株は樹立されず、臍帯血移植後の腫瘍抗原特異的T細胞が非常に少ない可能性が考えられた。 そこで、臍帯血移植と骨髄または末梢血幹細胞移植後の免疫反応を比較するために、抗原特異的T細胞を検出しやすいサイトメガロウイルス(CMV)に対する免疫反応を検討した。同種造血幹細胞移植を施行された患者の末梢血単核球にCMV pp65エピトープペプチド(1μM)を加え、IL-2存在下に14日間培養を行い、テトラマーを用いて抗原特異的T細胞の頻度・細胞数を解析した。骨髄移植/末梢血幹細胞移植後の患者においては、ペプチドによる刺激を行う前から約0.1%の抗原特異的T細胞が検出され、14日間の培養後は2-3%にまで増殖した。一方、臍帯血移植後の2名の患者から分離した末梢血単核球では、ペプチドでの刺激前後で抗原特異的T細胞は検出されなかった。以上のことから、臍帯血移植後のT細胞の免疫反応は、骨髄・末梢血幹細胞移植後に比べ弱いことが確認された。 移植片対宿主病(GVHD)と移植片対白血病(GVL)効果を分離することが造血幹細胞移植の成績向上に重要であることから、T細胞の活性化を抑制するCytotoxic T-Lymphocyte Antigen 4(CTLA-4)に着目し、ドナーにおけるCTLA-4 SNPのタイピングを行った。HLA一致同胞間移植において、ドナーがCTLA-4ハプロタイプ(-318,+49,CT60)C-A-Aの場合、GVHD発症率には影響を与えずに、再発率を低下させ、生存率が向上していた。
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