研究概要 |
【目的】近年,生活習慣病の胎児期起源説(DOHaD仮説)が注目されている.本研究では,母と娘の妊娠経過の共通点を検討することにより、これら一連の現象が世代を超えるのかを明らかにする. 【方法】平成20年度は仙台市内にある5病院で妊娠分娩管理された女性を対象とし,対象者(以下二世代目)とその実母(以下一世代目)の母子健康手帳に記載されているデータを集めた.平成21年5月までに得られたデータは724名,362組であった.ここまでのデータを入力し,一世代目と二世代目の非妊娠時の身長・体重・BMI値,妊娠中の経過(血圧,尿糖・尿蛋白,体重増加量,分娩時間,出血量,分娩方法),妊娠高血圧症候群(PIH)の発症率,出生児の身体測定値を比較した.さらに,世代間の妊娠経過,二世代目の出生体重や体格と三世代目の出生時の身体測定値との相関を調べた. 【結果】その結果,以下のことが示された.t検定とx^2乗検定による世代間比較で身長・結婚年齢・各期の収縮期血圧・体重増加量・出血量・分娩方法・異常出血の有無・それぞれの児の身体測定値に有意差を認めた.尿糖・尿蛋白・PIHの有無には有意差を認めなかった.2変量の相関において,一世代目と二世代目の妊娠初期以外の血圧・非妊娠時の体格・体重増加量に相関が認められた.また,二世代目の出生体重や非妊娠時の体格は,三世代目の出生時の身体測定値と有意な相関を示した. 【結論・意義】世代間で,出生体重や非妊娠時の体格が,妊娠中の血圧や出生した児の体格と関連することが示唆された.これは,DOHaD仮説が世代を越えて関連をもつという視点から興味深いものである.また,出生体重がその後の健康の指標となりうる可能性が示され,妊娠・分娩・出産での支援はもとより非妊娠時の女性への健康支援が次世代の健康増進につながると考えられる.
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