研究概要 |
パニック障害は、突然、強い不安とともに、動悸や発汗、胸痛、めまいなどの多彩な自律神経症状や精神症状が出現し、短時間で頂点に達するパニック発作に加えて、予期不安や広場恐怖といった行動上の変化が加わって発症する精神疾患である。これらの発作に対する認知や行動上の変化には、前頭葉機能の低下が推測されるが、発症にいたる脳内メカニズムは明らかではない。 そのため、本研究では、情動課題・認知課題遂行中の非侵襲脳計測と皮膚電気反応の測定、及び不安感受性尺度の測定によって、パニック障害の発症に関わる、中枢から末梢にいたる神経ネットワークの全体像を明らかにすることを目的としている。 まず、本年度は、同一の健常者8名に対して、認知ストループ課題と情動ストループ課題を両方行い、主観的な不安指標との関連を予備的に検討し、非侵襲脳計測、及び皮膚電気反応測定を行うための課題プログラムの作成を行った。その結果、情動負荷のない認知ストループ課題において、不安の高い被検者ほど回答数が少ない傾向(一致条件: Spearman's rho=-0.767,不一致条件: rho=-0.772,ともにp<0.05)が確認され、情動ストループ課題では、不安の高い被検者ほど、ポジティブな単語(例:歓喜)を呈示している条件での反応時間が遅かった(rho=0.857, p<0.05)。これらの結果より、同一の健常被検者において、被検者の不安の高さが情動負荷の有無に関わらず課題遂行に影響を与えることが示唆された。
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