局所に浸潤したマクロファージの活性化は慢性的な炎症刺激を周囲に及ぼし、悪性腫瘍や動脈硬化などの難治性慢性疾患の増悪・進展において中心的な役割を果たしている。研究代表者らは、プロスタグランジンE2が、EP4受容体およびEP4受容体の新規細胞内結合分子EPRAP/FEM1Aを介して、炎症刺激によるマクロファージの活性化を特異的にかつ強力に抑制することを見いだしており、本研究ではEP4受容体-EPRAPを中心とした抗炎症分子ネットワークの解明、特にEP4受容体依存的なEPRAP活性化のメカニズムと、その抗炎症作用発現に重要と考えられる未知の下流分子の同定を通じて、活性化マクロファージを標的とした上記難治性慢性疾患の新たな治療法の開発を目標としている。 昨年度に引き続き、本年度も、EPRAPの機能と病態生理学的意義の解明に向け、下記の研究を遂行した。 1. EPRAP/FEM1Aの組織・細胞内分布検討に向け抗体の作製をすすめ、ヒトEPRAPを特異的に認識する抗体を得た。 2. ヒトEPRAPリコンビナント蛋白を精製し、新規EPRAP結合蛋白の同定に向けた実験を開始した。 3. 動脈硬化発症など生体におけるEPRAPの機能解析のため、EPRAP遺伝子改変マウスの作製をすすめた。 以上より、新規の内因性マクロファージ活性化制御系である、EP4受容体-EPRAPシグナルに関して、更なる機能解析に必要な準備が整えられた。今後これらの成果をもとに、EPRAPの機能およびこれを中心とした抗炎症分子ネットワークを、in vitro、 in vivo両面で詳細に検討し、活性化マクロファージを標的とした難治性慢性疾患の治療法開拓につなげたい。
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