研究課題
着床不全に対して診断および治療方法を確立する事が現在の不妊治療における課題である。これまでの我々の検討において、子宮内膜のSTAT3活性が着床不全の分子標的に成り得る事が示唆された。(1)性交渉によって子宮局所にマクロファージが誘導され着床期子宮内膜には多くのマクロファージが存在する事、(2)これまでのin-vitroの実験系においてマクロファージとの共培養によりヒト子宮内膜上皮細胞のSTAT3活性を誘導する事ができるという知見から、本研究では、自己末梢血単球細胞を用いて、これを体外で精漿を用いて、子宮内膜上皮細胞にSTAT3活性を誘導するように分化し、つまり着床期直前の子宮局所にいるべきマクロファージを体外で再構築し、胚移植の前に子宮腔内にこれを戻す、いわゆる細胞治療のような事ができないかと考え、これに対する基礎実験を提案した。排卵期の末梢血単球細胞は共培養下において、子宮内膜上皮細胞(Ishikawa細胞)の胚接着因子発現に影響を与えないのに対して、卵胞期および着床期の末梢血単球細胞は子宮内膜上皮細胞の胚接着因子発現を変化させる事が示唆された。この結果より月経周期において末梢血単球細胞はその性質を変化させる事が示唆された。そこで、内因性のホルモンの影響を除外するために男性末梢血単球細胞を用いて検討を行った。エストロゲン存在下に高濃度(1μM)のプロゲステロンと精漿を添加処置した男性末梢血単球細胞との共培養により、子宮内膜上皮細胞のSTAT3活性は有意に上昇し、また胚接着因子であるMUC1およびMUC4発現が有意に上昇した。これら結果より、エストロゲン存在下に高濃度(1μM)のプロゲステロンと精漿を添加処置した末梢血単球細胞は子宮内膜上皮細胞のSTAT3を活性化し子宮内膜の着床能を制御する事ができる事が示唆された。
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