研究概要 |
本研究では,歯の喪失と鼻呼吸障害との関連を調べる目的で,MRIを用いて無歯顎被験者を対象に口腔と口腔咽頭の形態変化の関係を視覚的に明らかにすることを試みた.研究計画に従い,本年度はMRI撮像を行うにあたり,撮像シーケンスの選択並びに,撮像空間と計測精度との関係についてファントムを用いた検討を行った.その後,2名の無歯顎被験者を対象に,義歯装着の有無が鼻呼吸下の口腔咽頭形態に及ぼす影響について検討した.またこれらのデータと有歯顎ボランティア9名から得られた口腔咽頭形態に関するデータとの比較を行った.高速撮像法を用いてファントムを撮像し,撮像空間と計測精度との関係について検討した結果,撮像空間と計測精度の間には規則性が存在し,アイソセンター付近では,撮像対象を実寸に近い値で計測できることを確認した.同条件下で2名の無歯顎被験者を対象に,義歯装着の有無が口腔咽頭形態に及ぼす影響について,口腔咽頭断面積を指標として検討した結果,義歯非装着時は,装着時よりも鼻咽腔断面積が減少していた.また正常な歯列を有するボランティア9名から得られたデータとの比較を行った結果,無歯顎者では義歯装着の有無に関わらず大きい咽頭断面積を示していた.本研究結果は,義歯非装着時に鼻咽腔断面積の減少が観察されたことから,歯の喪失に伴う口腔形態の変化が鼻呼吸障害の要因となる可能性を視覚的に支持するものと考えられる.今後有歯顎者との比較についてもさらなる検討を加えながら,継続的にデータを蓄積する予定である.
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