粘膜アジュバントFlt3 ligand cDNA及びCpG ODNの有効性、またその抗体誘導の作用機序において樹状細胞が大きな役割を果たしていることが示唆されている。しかしながら加齢マウスにおいても同様の効果が得られるのか、また歯周病に対して有効な対抗手段となりうるのかという知見はなかった。本年度はプロフェッショナルな抗原提示細胞である樹状細胞(DCs)のAPC機能解析法を確立、また同法を用いて加齢マウスにおけるDCsの免疫誘導能を評価した。 6-8週齢のBALB/cマウスの肺臓、パイエル板、Nasopharyngeal-associated lymphoid tissue(NALT)からDCsを分離しovalbumin(1mg/ml)存在下で培養した。培養時にFlt3 ligand(20ng/ml)及びCpG ODN(0.5μg/ml)を加えたものを実験群とし、Flt3 ligand及びCpG ODNの調製時に用いたRPMIを加えたものを対照群とした。24時間後培地からFlt3 ligand及びCpG ODNを除去し、DO11.10の脾臓から分離したCD4^+T細胞を加え培養し、3日目に細胞増殖の検討を行った。その結果、対照群と比較して実験群のDCsは著明な細胞増殖誘導能を示した。またその誘導能は免疫誘導組織であるパイエル板及びNALTにおいて強い傾向を認めた。引き続き加齢が及ぼす影響について、マウスのDCsを中心に比較検討した。6-8週齢、1年齢、≧2年齢のBALB/cマウス由来の脾臓、パイエル板、NALTのDCs数を比較したところ、加齢に伴う著しい細胞数の減少がパイエル板では認められたが、NALTには認めなかった。APC機能においてはパイエル板及び脾臓由来DCsは加齢に伴いその能力が著しく減少したが、NALT由来DCsは減少傾向を示したものの高いレベルを維持した。 これらのことから、Flt3 ligand cDNA及びCpG ODNは加齢マウスのNALT樹状細胞をターゲットにしたアジュバントとして有効であり、高齢者に有効な歯周病ワクチン開発が可能であることが示唆された。
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