近年、ヒトゲノム塩基配列の完全解読が宣言され、ポストゲノムシーケンス研究の重要性が示唆され、タンパク質解析によるゲノムの解析機能、診断や治療にSNPsなどの遺伝子多型や遺伝子の発現量をマーカーとして利用する試み、さらにゲノム創薬にむけてのホモロジー解析を中心としたゲノミクス研究や、X線、NMR等の構造生物学関連の構造プロテオーム研究も進められている。これらのことから、機能に関連したプロテオーム研究により、タンパク質の量的、質的変動に関する情報が得られ、相互に作用するタンパク質のリンケージ解析が行われ、その生理機能がより詳細に解明されるものと期待される。今後、このような具体的なタンパク質の機能解析に加えて、タンパク質以外の細胞内低分子の量的。質的な変動に対する代謝分子の総体の解析(メタボローム解析)が必要になると思われ、この分野を自分の研究分野に応用しようと着想した。しかしながら、このような疾患特異的な低分子量代謝産物を網羅的、包括的に解析した研究は、さまざまな問題から十分に成果を達成していない。申請者は、消化器がんに発現、生成が認められる低分子代謝産物を中心に網羅的に解析してがんバイオマーカーを同定し、将来の臨床応用をめざしている。現在までに、nanoHPLC-MALDI-TOF-MS解析システム、AXIMA-TOF2ならびにLCMS-IT-TOFによるMS/MS解析での構造決定システムの確立した。予備実験にて、大腸がん細胞を移植したヌードマウスより、大腸がん細胞株に特異的に検出される低分子代謝産物を同定しつつある。現在、さらなる検討を進めている。
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