早期食道癌の内視鏡治療において、広範囲病変の内視鏡治療においては食道の管腔が狭いことから生じる術後狭窄の問題が残されている。そのような場合、術後狭窄予防のため内視鏡治療後、週1から2回の頻度で、数か月にわたり内視鏡的バルーン拡張術を行っている。低侵襲治療である内視鏡治療の利点を活かすため、何らかの術後狭窄の予防に関する新たなアプローチが必要であると考えられる。 本研究は、早期食道癌に対し、より低侵襲治療を目指す消化器内視鏡治療分野、とくに広範囲粘膜切除術において、しばしば問題となる術後食道狭窄の予防をキチン含有微生物由来バイオマテリアルシートを用いて行うという試みである。本研究では、全身麻酔を施行したミニブタの食道に全周性の仮想病変を想定した。内視鏡的粘膜下層剥離術の型通り、食道壁は非常に薄いため、術中穿孔予防のため粘膜下層に生理食塩水で希釈したヒアルロン酸ナトリウムを局注し、十分に筋層との距離を確保した後、フラッシュナイフ^<TM>等の電気メスを用いて食道粘膜を切開、直接粘膜下層を視認しながらそのまま粘膜下層の剥離、仮想病変の切除を行い、筋層表面が露出した人工潰瘍を作成、その後、約2週間で食道は完全に狭窄することで食道狭窄病変モデルを作成した。また、マウスの皮膚欠損モデル、生体ブタの皮膚欠損モデルにおける皮下移植実験において、キチン含有微生物由来バイオマテリアルシートは従来用いられていたシートよりも、その創傷治癒期間が短く有効であると考えられた。現在、消化管潰瘍部における検討を行っているが、シートがずれたり、破れたりと潰瘍部にとどまらせることが予想以上に困難であり、現在、原材料ならびに形状の改良など、シートの工夫・改良を行っている。
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