研究概要 |
1.臨床検体でのNF-kappa Bの活性化の検討 喉頭癌の根治照射後再発腫瘍と診断確定時の組織との比較検討を行い、再発腫瘍のNF-Kappa Bの活性化の程度を判定した。神戸大学医学部附属病院にて喉頭癌症例(Glottic, Supraglottic carcinoma ; T1NOMO or T2NOMO)に対し根治的放射線療法を施行した250症例のうち、組織学的な局所再発が確認された35例と背景因子(年齢、性別、T stage、分化度、照射線量等)を同一にした非再発例70例を併せた105例を対象にしてNF-κB、Bc1-2、EGF receptorに関する免疫組織学的検討を施行し、放射線治療後の局所再発率との関連を検討した。その結果、臨床的検討:観察期間は中央値5年(1-16年)。免疫組織学的検討では、NF-κBは再発群:77%,非再発:50%が強陽性で(P=0.01)、Bc1-2(P=0.75)やEGF receptor(P=0.48)と比較しても、照射後の再発(放射線抵抗性)に対して強く有意な相関が認められた。またNF-κB陽性62例では、NF-κB陰性43例に比べて、根治治療後の局所制御率が有意に不良であった(図2,P=0.008)。再発症例29例の再発後の生検検体では、NF-κBの活性化は26例(90%)に認められ、治療前(59%)よりも統計学的にも有意に高頻度で認められた(p=0.004)。 2.腫瘍細胞を用いた放射線抵抗性とNF-kappa Bの活性化の検討 大腸がん細胞株HCT116 p53+/+,P53-/-の親株(Parent cell)と放射線抵抗性株(Resistant Clones)を用いて、これら細胞株のNF-Kappa Bの活性化の程度をウエスタンブロットとEMSA法にて判定した。大腸がん細胞株:HCT116を用いた放射線照射後の抵抗性は、pS3の野生型では放射線抵抗性を獲得していたが、p53ノックアウト細胞では元々放射線抵抗性であったが、それ以上には放射線感受性に変化がないことが確認された。それらの親株と抵抗性クローンを用いたNF-κBのDNA binding assayでは、放射線抵抗性とNF-κBのDNA binding activityは、双方の系で強い相関を示していることが確認された。
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