研究概要 |
本年度はまず,ラット骨再生モデルとの比較検討のため,再生骨の立体構造制御を臨床的に検討した.顎顔面領域で頻繁に行われる,口唇・口蓋裂に対する顎裂部腸骨移植術を施行した患者を検討の対称とした.その結果,腸骨移植後ほぼ全例で骨吸収を認め,骨吸収極期は移植約120日後であることが示唆された.さらに,移植後早期にインプラント体を埋入すれば骨吸収は抑制されることが示唆された.我々の検討では,ラット骨再生モデルの骨吸収極期は移植後約120日で,臨床例と同様であり,ラット骨再生モデルの妥当性が確認できた.前年度にラット骨再生モデルにおけるVEGF, CCN2/CTGFの発現変動を解析したため,今後はインプラント埋入時に採取した再生骨を用いて,同様の検討を臨床的に行う予定である.上記成果の一部は国際口蓋裂学会誌において発表した. 一方,移植骨が内軟骨性骨化により再生する過程において作用する因子を検討するため,軟骨細胞においてCCN2/CTGFの遺伝子発現がdexamethasone刺激で変動するとの過去の我々の報告に基づき,ヒト軟骨細胞様細胞株を用いて検討を行った.手法として,ヒト軟骨細胞様細胞株HCS-2/8細胞をdexamethasoneで刺激しマイクロアレイ法において変動する遺伝子を網羅的に検索した.その結果,171個の有意差のある発現変動遺伝子を認めた.CCN2/CTGF遺伝子は約2倍の発現上昇を認めたがVEGF遺伝子の発現に変動はなかった.また,ある転写因子群の著しい発現上昇を認めた.これはステロイドが軟骨に作用した際に変動する新規に確認された転写因子であり非常に有意義な発見であると考えられるが,定量的に遺伝子発現変動を確認する必要がある.本年度中には行えなかったが,今後さらに解析を継続し,英語論文にてその成果を発表する予定である.
|