研究概要 |
歯周病原性細菌に対するIgG抗体価等の歯周病感染を示す指標や,内科化学療法時のfebrile neutropeniaの日数等のデータの蓄積を行った。得られた結果について解析を行ったが,現有する歯周病原性細菌に対するIgG抗体価の測定系は特異度が高いものの,感度が良好ではなく,そのことが障害となり,両者の関連性を示す結果には至らなかった。 一方で,昨年度Supportive Care in Cancer誌にとして報告し掲載された,歯周炎を原因として重度のfebrile neutropeniaを発症したと考えられ,複数回行われた化学療法の間に歯周病治療を行うことで,その現象が顕著に見られた症例研究は多大な反響を呼んだ。 ひきつづき,造血幹細胞移植期の口腔細菌量に関する研究,また,感染経路になり得る抗がん剤や放射線療法による副作用である口腔粘膜の広範かつ重度のびらんの実態について臨床研究をすすめ,これらについてもSupportive Care in Cancer誌にアクセプトされ,本年度2報掲載された。 これらの知見から,本年度は歯科のみならず,医科あるいは看護の分野からの招待講演の依頼が相次ぎ,その件数は12件に上った。本申請研究課題は十分な研究実績を出すことができた。また,その内容を多くの機会で公表することができた。白血病治療患者等,易感染状態にある患者の口腔内の感染管理の重要性を示し,そのあり方に一石を投じることができたと考える。
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