我々はこれまで、自然免疫応答を司るヒトマクロファージによるブタ細胞の貪食機序が、異種細胞間CD47-SIRP□シグナルの不応性によるものであることをin vitroで明らかにしてきた。本研究ではこれらの研究成果を発展させ、小動物モデルにおいてレシピエント種CD47を発現したドナー臓器を確立し、臓器レベルでのCD47遺伝子導入によるマクロファージ性拒絶反応抑制効果を解析することを目的としている。 まずin vivo遺伝子導入装置(CUY21SC)を使用し、レシピエント種CD47を発現したドナー臓器の作製を行った。方法はマウス腎動脈にカテーテルを挿入し、腎臓を電極で挟んだ後にpKS33-hCD47vectorをカテーテルより注入し、パルス出力を行った(75VPon100msec Poff900msec3回)。1週間後、腎臓を摘出しヒトCD47発現を免疫組織染色で確認した結果、限局的にその発現を認めた。次に肝臓に遺伝子導入する目的で、門脈よりpKS336-hCD47vectorを注入し、パルス出力を行った。導入1週間後における肝臓の免疫組織染色では、賢臓よりもヒトCD47の発現効率は低いことが確認された。 今後さらにCD47遺伝子導入効率の向上を図った後、遺伝子導入マウス腎臓・肝臓を摘出しex vivoにてヒト全血で腎灌流、肝灌流を行う予定である。灌流はTN式摘出臓器灌流装を改良し、ヒト血液で臓器灌流を行い、定時的に灌流血液・生化学・免疫学的検査と灌流臓器のレーザー微小循環血流計による組織血流を測定する。
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