神経回路網の構築は、多数の神経細胞が軸索を伸長させて標的細胞と出会い、シナプスを形成することから始まる。軸索の伸長過程においては、伸長促進あるいは反発因子の受容体とその下流の細胞内シグナル伝達分子群、細胞接着分子群、アクチン細胞骨格系蛋白質等が軸索先端の機能部位に小胞輸送によって運ばれ、適切に機能することが重要となる。本研究では、シナプス形成や成熟過程における小胞輸送の役割とその制御機構について明らかにすることを目的とする。Rabconnectin-3は、シナプス小胞輸送を制御することが確立しているRab3Aの活性制御蛋白質に結合するシナプス小胞巨大蛋白質である。本年度は、Rabconnectin-3αおよび-3βの両サブユニットのノックアウトマウスの作製を進めた。その過程で、本蛋白質がシナプス形成・成熟の非常に初期の段階に関与することを示唆する結果が得られた。一方、最近になってRab13の神経再生への関与が報告されている。これまで研究代表者の所属するグループは、上皮細胞においてRab13が接着分子の輸送を制御することを見出し、その標的蛋白質としてJRABを同定している。本年度は、Rab13-JRAB系の神経突起の伸長過程における役割を明らかにするため、PC12細胞およびマウスの初代海馬神経細胞を用いた細胞生物学的解析を行った。その結果、Rab13-JRAB系が何らかの機能分子の輸送を介して細胞骨格系の再編成に関与することで神経突起の伸長を制御していることを示唆する結果を得た。来年度も引き続き、Rab3A-Rabconnectin-3系およびRab13-JRAB系の機能解析を行うことによってシナプス形成・成熟過程における小胞輸送の重要性とその制御機構が明らかになることが期待できる。
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