本研究では、歯胚特異的に発現する転写因子Sp6の翻訳後修飾の有無を確認し、その転写因子としての機能的意義を明らかにすることを目的としている。前年度において、まずSUMO化の存在の有無を確かめるために、HA-SUMO1 active form、HA-UBC9、HA-Sp6の発現ベクターをCos7細胞に共発現させHA抗体でウエスタンブロットを行った結果、SUMO1 active form存在下でSDS-PAGE上の移動度が遅いバンドとadditionalなバンドが検出された。このことから、共発現させている細胞の中でSUMO化が起こっていることが示唆された。検出されたバンドがSUMO化したSp6なのかを確認するためHA-Sp6の発現ベクターの5'末端にFlagのタグ3'にHisタグをつけFlag抗体・His抗体によっで発現を確認したが、バンドの移動・additionalなバンド共に確認されなかった。 SUMOタンパク質にはSUMO1、SUMO2、SUMO3、SUMO4が存在する。そこでSUMO1と同じく発現頻度が高いSUMO2・SUMO3の共発現によりその翻訳後修飾の有無を確認するためHAタグを付加した発現ベクターを作成し発現をSDSページにて試験したが、Sp6のSUMO化したバンドは確認されなかった。このことから現在まずSUMO化酵素カスケードを用いて、イソペプチド結合を通したターゲットタンパク質上の特定のリジン残基に対する、SUMO1、2もしくは3のC末端の共有結合により、SUMO化タンパク質を検出する方法により直接in vitroの実験で発現のSUMO化の有無を確認することを検討している。 歯胚特異的に発現するSp6遺伝子の欠損は過剰歯やエナメル質形成機転の異常をもたらす。また、我々のグループではSp6遺伝子の過剰発現が歯の正常な発生分化を阻害することを見出している(2010. 4月ゴードンカンファレンスにて発表、論文投稿準備中)。Sp6分子構造と機能解析は歯胚形成機序の解明、さらに将来の再生の臨床応用に重要な知見となると考えられ、Sp6の翻訳語修飾の有無を確認した本研究の成果はその一助となると考えられた。
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