研究概要 |
【背景】一過性の短時間の臓器の虚血がその後の虚血再灌流障害を防ぐ効果があることが知られており、Ischemic preconditioning (IPC)と呼ばれている。また、虚血にした部位以外の遠隔臓器でも防御効果があるとされ、Remote preconditioning (RIPC)と呼ばれている。この効果は心、脳、肝臓、腎臓など多くの臓器で証明され、その機序としてHO-1の関与が示唆されている。心血管領域においてはすでに臨床応用がなされているが、小腸におけるIPCやRIPCの有用性の報告はほとんど認められていない。【方法】Lewisラットを用いて同系異所性小腸移植を行った。IPC群では上腸間膜動脈の10分クランプ30分オープンを施行後に小腸移植を施行。RIPC群では下大動脈15分クランプ15分オープンを3サイクル施行後に小腸移植を施行した。コントロール(C)群とIPC群、RIPC群で移植後3, 6, 12, 24時間での小腸粘膜障害の程度、血液学的検査所見の比較を行い、その有用性を検討した。また、ELISAを用いて血清HO-1の測定を行った。 【結果】IPC群及びRIPC群では、C群と比べ3時間後群において明らかに小腸粘膜の障害(Park分類)が軽度であり、虚血再灌流障害からの防御効果が認められていた。血中のLDH、 AST、 ALT値も有意に低下していた。防御効果は移植後徐々に失われ、24時間後では各郡で差は認められなくなった。【考察】小腸冷虚血モデルにおいても、IPC及びRIPCは術後早期に虚血再灌流障害から臓器を守る効果があることが示された。小腸は虚血再灌流障害によって引き起こされる粘膜障害からBacterial translocationを起こしやすい臓器であるため、早期の虚血再灌流障害を防止できるIPCやRIPCは臨床においても非常に有用な方法となる可能性がある。
|