アレルギーの発生機序は未だ不明確な点が多く、明確な予防策も確立していない。アレルギー疾患は多因子疾患で、複数の遺伝的要因と環境要因の相互作用によって発症が制御されていると報告きれている。食物アレルギーは経時的に症状が寛解していく場合も多い。 昨年度から引き続き、2007年及び2008年から新たにリクルートしたアトピー性皮膚炎罹患小児及び健常児を対象として研究を行った。目標である対象者数の100%200名のサンプリングを終了した。質問票調査から詳細なライフスタイルデータを収集、また新たに母子手帳に記載のある過去身長・体重のデータを収集した。今年度は環境因子と卵白特異的IgE抗体値に焦点をあてて解析を施行した。対象者から、1回目のCAP-RASTを0歳時に施行し、さらに2009年6月までの間に2回目のCAP-RASTを施行した小児14名(男児9名、女児5名)を抽出(現在は数回CAP-RASTを施行しだ対象者:50名)。1回目より2回目に卵白特異的CAP-RASTが減少した群(9名)、増加した群(5名)の2群に分けこ両群間と質問票から得られた因子の関係を検討した。生後6ケ月間の体重の増加率において、減少群の方が大きい傾向が認められた(P=0.088)。アレルギー症状に関しては、増加群では咳・ゼロゼロ・鼻水といった症状の認められるものが多かった。日中の過ごし場所としては、減少群の9名中5名は日中保育園、4名は自宅にて過ごしていたが、増加群は5名全員が自宅で過ごしていた。生後6ケ月の体重増加、アレルギー症状の有無、日中の保育場所が卵白特異的IgE抗体値の推移に影響がある可能性が示唆された。(2009年第68回日本公衆衛生学会総会発表)。 またこの研究を更に遂行する目的で、2010年3月から2011年2月までアメリカへの留学(日本学術振興会:常勤研究者)が内定しており、今後はすべての対象者において環境・遺伝的要因、免疫学的要因、更に環境有害物質に焦点をあてて研究・解析を進めていく予定である。
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