研究概要 |
野生型(WT)マウス及び骨格筋特異的-Akt1コンディショナルトランスジェニック(TG)マウスに対し,心筋梗塞モデルを作製し心エコー,観血的血行動態測定および組織学的手法を用いて骨格筋肥大の心機能・心臓リモデリングに与える影響を検討した術後2日後に行った心エコーでは,心筋梗塞領域はWTマウスとTGマウスで同程度であった.しかしながら2週間後の心エコーでは左室内腔の拡大や健常部位の壁肥厚はTGマウスで有意に抑制された.肺重量の増加もTGマウス群で有意に抑制され肺うっ血の軽減が示唆された.またTGマウスでは梗塞境界領域の毛細血管密度の増加,非梗塞領域での心筋間質の線維化と心筋細胞のアポトーシスの抑制が認められた.以上のデータから骨格筋の肥大は遠隔臓器である心筋のリモデリングを制御する可能性が示唆された.マイクロアレイによるスクリーニングの結果いくつかの骨格筋由来分泌因子候補をリストアップすることができた.その中のひとつに近年代謝調節因子として注目され下いるFGF-21が挙げられた.培養心筋細胞に対するFGF-21の作用の検討したところ,FGF-21はβ-Klotho非依存的に心筋細胞でERK, Aktシグナルを活性化することが明らかになった.またアデノウイルスベクター用いてFGF-21を培養心筋細胞で過剰発現すると,低酸素・再酸素化刺激やdoxycyclinによる細胞傷害を著明に抑制したことから,FGF-21はこれらシグナルの活性化を介して低酸素刺激によるアポトーシスの抑制に寄与している可能性が示唆された.さらにアデノウイルスベクターを経静脈的に投与in vivoでFGF-21を過剰発現させると,心筋虚血/再灌流による梗塞領域や心筋細胞のアポトーシスを著明に抑制した,以上の結果からFGF-21は骨格筋より分泌される心血管保護因子である可能性が示唆された.
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