6週齢のSCIDマウス4匹に対して背部皮下2ヶ所にヒトグリオーマ細胞(頭側:U373尾側:U87MG)を移植した。2週経過し腫瘍が発育後、腹腔内に薬剤(薬剤投与群:13C標識メチオニン1mg/ml 1ml、コントロール群:生理食塩水1ml)を1日1回連続6日間投与し、最終投与1時間後に屠殺後-80℃で冷凍保存したものを4.7T動物実験用MRI装置にて1H、13Cを目標核種としてスピンエコー法を用いて撮像した。コントロール群では皮下脂肪に含まれるメチレン基に含まれる天然存在13Cによると思われる1ヵ所の淡い13C-MR信号を認めたが、13C標識メチオニン投与群では腫瘍存在部に一致して2ヵ所の信号を認めた。また、移植前の細胞培養中において増殖能の高かったU87MG株から発育した腫瘍にはより高い13C-MR信号を認め、細胞増殖に関連したアミノ酸代謝を反映しているものと予想された。画像撮像と同時に行った、13C-MRスペクトロスコピーでは、13C由来のスペクトルの収集に成功したが、今回メチオニンに13Cが標識された位置が天然存在脂肪酸メチレン基のケミカルシフトと近い値を呈しており、スペクトルの分離は困難であった。以上の結果から13C-MRIは、11C-PETと同様の画像所見を呈し、腫瘍性病変を初めとした限局性病変に対する代謝イメージングや分子標的イメージングの1つのツールとして十分有用となりうる方法であることが証明された。また、安定同位体である13C製剤を用いることにより核医学的手法とは異なり、検査試薬の保管や撮像区域に関する制限がなく、人体への被曝も起こらない事から、より安全で広く利用できる検査となりうる可能性が示された。
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