本研究は糖尿病の3大合併症の一つである糖尿病性網膜症の発症機序解明とリポプロテインによる新たな治療法開発を目的としており、初年度にあたる平成20年度は、2つの研究実施計画の遂行ための準備段階として、以下のような成果を得た。 1.網膜由来リポプロテインの生化学的・生理学的解析 網膜を用いる解析に先立ち、同じ中枢神経系で、試料を大量に得ることができる大脳皮質を用いて、グリア細胞由来のリポプロテインの単離方法を確立した。具体的には、新生児マウスの大脳皮質からグリア細胞を初代培養し、その培養上清からショ糖密度勾配超遠心法を用いてリポプロテインを単離した。ここで用いた大脳皮質由来初代培養グリア細胞の細胞種の構成を免疫組織学的に解析した。また、リポプロテインのコレステロール量およびアポリポプロテインを解析した。さらに網膜神経節細胞を用いて、このリポプロテインが神経細胞死を抑制する生理活性を持つことを確認した。 2.網膜におけるリポプロテインの生理学的および病態生理学的役割の検討 本研究で使用するアポリポプロテインE欠損マウスを本学の実験動物飼育施設に導入し、実験に十分な匹数を得るために交配を行い、コロニーを確立した。また、本研究で使用する視神経障害モデルを作製するために、マウス視神経切断手術の手技を学び、研究遂行のための準備を整えた。 以上の研究成果は、平成21年度より実施する実験に向けた重要な予備研究であり、平成20年度には非常に意義のある成果が得られたと考えている。
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