研究概要 |
法医実務に応用可能なより高精度のびまん性外傷性軸索損傷(TAI)の診断法,鑑別診断法及び受傷後経過時間推定法の確立を目的として,頭部外傷例の脳梁についてβ-amyloid precursor protein(APP), Neuron-specific enolase(NSE)といった軸索内輸送蛋白質及びInterleukin-8 (IL-8), Tumor necrosis factor-α(TNF-α)といった炎症性サイトカインを指標として免疫組織化学的検討を行った。APP,NSEには,明らかに2種類の染色パターンが存在し,神経線維束の走行に沿って染色されるものは外傷性軸索損傷,神経線維束に沿わず散在性に染色されるものは低酸素血症に起因する二次性軸索損傷に相当する可能性が示唆された。また,NSEは受傷後2時間以上経過した例の全例で軸索損傷を示すNSE陽性axonal bulbが認められ,APPと比較し早期診断への有用性を期待させる結果が得られた。さらに,IL-8,TNF-αはそれぞれ受傷後3日,4日より陽性axonal bulbが認められ,受傷後経過時間推定のための新たな指標となる可能性が示唆された。
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