研究概要 |
1 ラット肝癌細胞株における癌幹細胞マーカーとされている遺伝子の発現について詳細に解析し、ラット小型肝細胞との比較を行った。RT-PCRや免疫染色等で検討した結果、Thy1やCD133,EpCAMといった癌幹細胞マーカー遺伝子は小型肝細胞においても強く発現しているが、解析した6種類の肝癌細胞株のなかでは、一部の細胞株でしかこれらの遺伝子が発現していないことが明らかになった。増殖関連遺伝子の発現についても同様に小型肝細胞および肝癌細胞株によって発現の差は非常に大きかった。この結果から、一般に肝癌の癌幹細胞マーカーと呼ばれる遺伝子は癌化には必ずしも必要でないと考えられた。 2 小型肝細胞特異的遺伝子として見つかっているCD44およびD6.1Aについて、肝癌細胞株における遺伝子発現解析を行った。リアルタイムPCRの結果から、解析した6種類全ての肝癌細胞株においてCD44のmRNAレベルでの発現が認められた。このことから、CD44は肝癌細胞における増殖等に非常に重要な役割を果たしていると考えられる。 3 ラット小型肝細胞の増殖に関与していると考えられるFollistatin遺伝子について検討を行った。肝癌細胞株における発現をリアルタイムPCRで検討した結果、いくつかの細胞株において高い発現が認められた。また、ラット小型肝細胞にレンチウィルスを用いてshRNAを発現させ、Follistatin遺伝子をノックダウンすることで、小型肝細胞の増殖が抑制することが明らかになった。以上のことから、Follistatinは肝癌細胞の増殖にも深く関与していることが示唆された。
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