研究概要 |
【研究の目的】地域高齢者の口腔の健康(特に口腔乾燥・唾液分泌)と主観的幸福感との関連、及び薬の使用状況(薬の数や種類)と唾液分泌能との関係を明らかにし、唾液分泌能の低下している者を簡便な問診によりスクリーニングする方法を確立することである。 【研究方法】本調査は、北海道の苫前町において,役場および苫前町立歯科診療所の協力のもとに行われた.65歳以上の介護認定を受けてない高齢者1185名に,事前に調査の主旨の説明,歯科検診の日時,場所の案内およびアンケートを郵送し,調査への協力を依頼したところ,140名(11.8%)が参加した.平成21年7月21日~7月30日,町内の15ヵ所の集会所や公民館において8日間かけて実施された.このうち,欠測データ及び85歳以上のものを除外した128名(平均年齢:75.06±5.50歳,性別:男性73名,女性55名)を分析対象とした. 【結果】唾液分泌量平均値は,2.27±2.25(0.00-13.50)ml/15分であった.唾液分泌低下群は67名(52.3%)にみられ,男性43.8%,女性63.6%(P<0.05)と性差を認めた.使用薬剤数と唾液分泌量には有意な相関関係があった.唾液分泌低下群は,薬剤数1~2剤で50.0%,3~5剤41.7%,6~8剤50.1%,9剤以上75.0%で,9剤未満と9剤以上との比較で,唾液分泌能低下群の割合に有意な関連がみられた(P<0.05,χ^2検定).唾液分泌の低下の有無を従属変数,年齢,性別,飲酒,喫煙の有無,現病歴の有無,薬剤数(9剤未満,9剤以上)を独立変数とし,多重ロジスティック解析を行ったところ,性別(オッズ比2.63,P<0.05)と薬剤数(オッズ比3.10,P<0.05)が有意に関連していた. 【まとめ】安静時唾液分泌能低下群は約半数にみられ,女性でその割合が高かった.使用薬剤数と安静時唾液分泌量との間には負の相関があったが,安静時唾液分泌能低下群の頻度は,9剤以上で有意に高くなることが,明らかになった.唾液分泌能低下が口腔の健康状態にどのような影響を及ぼすかを今後検討する必要がある.
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