近年、基礎的臨床研究や、一般臨床の診断法として陽電子断層撮影法(PET)が大きな注目を集めている。PETを活用する上で特に重要となるのが、放射性同位体で標識された化合物の合成である。しかし、PETに用いられる放射性同位体の半減期は短いため、合成法は容易ではなく、MeIやMeOTfを用いた求電子的なメチル化剤がその^<11>C標識反応の多くを占めている。 これに対し、本研究では迅速に標識可能な求核的^<11>C標識剤を探索することを目的とした。平成20年度では、まず通常の安定同位体を用いて、初期的な検討を行った。すなわち、^<11>C標識の際は、【^<ll>C】MeIを用いて反応を行うが、まず安定同位体のMeIとアルキルリチウム間のハロゲンリチウム交換反応の検討を行った。具体的には、MeI溶液に一定温度下で、n-BuLiあるいは、t-BuLiを加えた後、反応系に標識対象として、アセトフェノンを加え、得られる化合物を分析した。この際、反応温度および反応溶媒、あるいは反応時間の条件を検討した。理想的には、MeIが全てMeLiに変換され、アセトフェノンに求核付加するのが望ましい。また、^<11>C標識を実際に行う場合には、[^<11>C]Melの物質量は極めて少量になるため、その後の精製過程も考慮すると、n-BuLiやt-BuLiは付加せず、少量のMeLiのみが求核付加することが最終的な目標である。こうした観点から、溶媒、反応温度など、様々な角度から検討を行っているが、まだ理想からはほど遠い検討状態であると言わざるを得ない。今後、基質依存性なども含め考察を行っていく予定である。
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