研究概要 |
本研究は、がん患者の個別化医療の実現を目的とする新たな医療技術開発として、PET(positron emission tomography)と加速器質量分析器(AMS : accelerated mass spectrometry)を組み合わせたがんの早期治療判定方法の確立をめざし、その基礎的な検証を行うものである。我々は、がん治療で生ずるがん組織の微細な破壊に着目し、あらかじめ腫瘍に取り込ませたFDGが、抗腫瘍化学療法で生ずる微細な腫瘍細胞の破壊によって血中に漏出する量を測定し、その漏出量をもとにして、破壊された腫瘍の量の予測、つまり治療効果を早期に判定する。 20年度はF18-FDGとC14-FDGの腫瘍モデルマウスによる体内動態の確認を行った。F18-FDGは、横浜市立大学附属病院放射線部のサイクロトロン施設で行い、C14-FDGは同大学放射線科が保有し、同大学医学部RIセンター内に保管してあるものを使用した。動物実験は同大学医学部RI研究センターにて行った。動物はヌードマウス(8週齢、動物種:BALB/全)15匹を使用した。15匹のヌードマウスに腫瘍(扁平上皮癌)を移植し(細胞株:SQ5,細胞数5.0x106)、そのうち3匹には移植8日後に4時間の絶食を行い、犠牲死ののち、腫瘍の摘出と血液の採取を行った。この値をバックグラウンド値として扱った。残りの12匹の腫瘍移植ヌードマウスは、移殖8日後に腫瘍の発育を確認後、4時間の絶食を行い、その後、F18-FDGとC14-FDGを投与し犠牲死ののち、腫瘍の摘出と血液の採取を行った。得られた検体は、同大学医学部RIセンター内のガンマカウンターにてPET製剤の放射能測定を行った。さらにC14含有量の測定のため、加速器分析研究所(IAA社)に送付し、測定を依頼した。この結果、PET製剤とAMS測定によるC14製剤の動態は非常に近似していることが確認され、将来的にPETとAMSを組み合わせて特定の物質の動態分析行うことが可能であると考えられた。本研究で目指す、治療効果判定としての腫瘍からの物質の拡散量の測定に応用できることが確認された。
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