本研究では、大量小腸切除後、完全静脈栄養(TPN)管理下の短腸症候群モデルにおいてボンベシンがbacterial translocation (BT)を抑制する作用があるか、及びその作用が長期TPN管理による肝障害の程度を軽減させうるかを比較検討することを目的とした。平成21年度においては小腸80%を大量切除したラット短腸症候群モデルを作成し、中心静脈カテーテルを頚静脈より挿入しTPNラットモデルを作成、ボンベシン投与群・非投与群に分け、bacterial translocationの程度と術後6ヵ月後の肝障害を比較検討する予定であったが、大量腸管切除後の中心静脈カテーテル管理を6ヵ月間続けることに難渋した。TPN管理ではないラット小腸大量切除モデルでのボンベシン投与群・非投与群の比較では、ボンベシン投与群の方が、体重減少が抑えられ腸管粘膜の増生も維持された。また、ボンベシン投与群の方がサイトカイン(IL-6、TNF-α)の発現も抑えられている。TPNモデルにおいても同様の結果が予測されるため、中心静脈カテーテルの管理を安定化させることが重要であった。現在我々が治療に難渋しているTPN管理下の短腸症候群患児と似たモデルを作成し、その結果を臨床に応用したい。
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