Prokineticin2 (PK2)は、分子時計が発振するリズムを様々な生理機能に伝達すると考えられている。本研究では、PK2が血圧の日内リズムの形成に延髄レベルでどのように関わっているかを調べることを目的としている。このことを踏まえて、本年度は以下について焦点を当てた研究を行い、それぞれ一定の成果を得た。 (1)ラットの延髄孤束核(NTS)においてPK2のには日内リズムがあるのか 雄のWistar-Kyoto (WKY)ラットから4時間毎にNTSを解剖採取し、NTSにおけるPK2の発現レベルをリアルタイムPCRにて解析した。その結果、PK2のNTSにおける発現レベルは高く、また、その発現には明期に高く、暗期に低くなるという日内リズムがあることが分かった。 (2)PK2をラットNTSに与した場合の循環動態に与える影響および時間薬理学的な作用の検討 雄のWKYラットを用いて、ウレタン麻酔下および人工呼吸管理下にて、大腿動脈から挿入したカテーテルを通して血圧および心拍数を測定し、NTSにBv8(両生類から抽出した哺乳類Prokineticinのhomologue)を微量注入して、循環動態の変化について検討した。その結果、ラットNTSへの投与によりBv8は、血圧および心拍数を低下させる作用があることが分かった。また興味深いことに、Bv8の効果は、PK2の発現レベルが上昇する明期に強くみられ、PK2の発現が低くなる暗期では減弱する、すなわち、時間依存的であることが判明した。 (3)PK2およびその受容体(PKR2)の延髄における局在の検討 PK2の延髄における局在を免疫組織化学法にて検討した。その結果、PK2タンパクは延髄に広く分布し、なかでもNTSに強く発現していることが分かった。PKR2については、現在、優れた抗体が入手できず、本年度は解析できなかった。 以上の研究成果は、PK2が中枢レベルで血圧制御、特に血圧の日内リズムの調節に深く関わっている可能性を示している。この成果を踏まえて、次年度は、本態性高血圧モデルラット(SHR)を用いることで、高血圧発症、特に血圧日内リズムが消失したnon-dipper型高血圧の病態生理とPK2の関わりについて引き続き研究する。
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