研究概要 |
近年、増加している下肢虚血に対して、アンギオポエチンファミリーのサイトカイン(特定機能蛋白質)を使用した遺伝子治療が一定の成果を挙げ、臨床応用されるに至っているが、これらの治療はまだ多くの問題を抱えている。遺伝子治療では、遺伝子が機能を発揮するまでにタイムラグがあり、急性期疾患には不向きである。また、遺伝子導入では発現たんぱく質の量がコントロールできない。そこで、心筋への特定機能蛋白質が導入可能であれば、現在の遺伝子治療の欠点を補充可能な、新しい治療法を開発できる可能性がある。我々は、脳の特定機能部位である神経核に蛋白質導入することに成功し(Neuroscience Letters,378:18-21,2005)、この技術を利用し、生体心筋への蛋白質導入に成功している(Annals of Thoracic and Cardiovascular Surgery accepted)。平成20年度は、ラットの下腿筋にベクターを使用して、蛋白質が十分取り込まれているのかを調査した。またその上で、一酸化窒素合成酵素がベクター使用下に下腿筋に取り込まれるかを調査した。これにより、下腿筋にタンパク質が十分取り込まれて機能していることが示された。急性動脈閉塞に対する蛋白質直接導入法が可能である可能性を示すことができた。 平成21年度は引き続いて下肢虚血モデルラットでの一酸化窒素合成酵素発現量の測定と、下腿筋に直接一酸化窒素合成酵素のインジェクションすることによる代謝動態および血行動態への影響を調べていく予定である。
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