<研究目的>神経障害性疼痛治療の新規ターゲットとしてのセラミドの関与を検討する。 <研究計画・方法> 1.神経障害性疼痛モデルにおけるセラミドの発現分布 神経障性疼痛モデルとして、坐骨神経を1/2結紮する坐骨神経部分結紮(Partial Sciatic Nerve Ligation: PSL)モデルを作製し、von Frey mament法および熱刺激試験法により術後の疼痛閾値を測定し、その経日変化を追う。また、PSLモデルの脊髄におけるセラミドの発現分布について免疫染色法を用いて調べる。 2.神経障害性疼痛モデルにおける疼痛閾値に及ぼす影響 セラミドを正常マウスおよび神経障害性疼痛モデルマウスの脊髄くも膜下腔内(intrathecal: i. t.)に投与し、von Frey filanlent法および熱刺激試験法により疼痛閾値の変化について行動薬理学的解析を行う。 <結果・考察> 1. PSLモデル作製後1日目よりアロディニアおよび痛覚過敏反応が観察され、1週間以上持続することが確認された。そのPSLモデルより採取した脊髄の免疫染色の結果、モデル作製後4日目において脊髄後角でのセラミド発現が観察されたが、sham opeおよび二次抗体のみを処置した脊髄では発現が認められなかった。 2.セラミド(0.3-3nmol)のi. t投与により、正常マウスにおいて投与1日後から用量依存的にアロディニアが発現し、投与後3日まで持続した。しかし、熱刺激による痛覚過敏反応は観察されなかった。一方、セラミドの坐骨神経周囲投与では、von Frey filament法および熱刺激試験法どちらにおいても疼痛閾値に影響を与えなかった。さらに、脊髄をターゲットにし、神経損傷後7日目のPSLモデルにセラミドi. t.投与を行った結果、vehicle投与群と比較して疼痛閾値は変化しなかった。 これらの結果より、神経障害性疼痛を増悪させる因子として働く可能性は低いが、脊髄において疼痛を誘発する因子として機能していることが明らかとなった。したがって、本研究結果により、セラミドが疼痛と密接に関連する脂質分子であり、神経障害性疼痛の治療ターゲットとなりうる可能性が導かれた。
|