研究概要 |
本研究の目的は、歯の萌出経路形成において重要な役割を持つ破骨細胞での細胞接着を免疫組織学、生化学的に解明し、歯槽骨の骨吸収による歯の萌出に関わるメカニズムを明らかにすることである。 平成20年度研究計画は、ラット破骨細胞を用いてイノシトール1,4,5-三リン酸受容体(IP_3R)のアンタゴニストであるゼストスポンギンC(XSC)を作用させた際、骨吸収能および、細胞骨格、接着構造に対してXSCの濃度、作用時間、作用時期による影響の解析と新生児ラットを用いて歯の萌出時の破骨細胞におけるIP_3Rの発現を解析する予定とした。現在までに研究成果として以下のことが各実験において確認できている。『実験1.IP_3Rアンタゴニストを用いた実験:XSCの非存在下においてはポドゾーム発現部位とIP_3R-III型の局在は高い相同性が認められた。XSCの存在下においては破骨細胞の形態変化として収縮が認められ、アクチン線維の配列の乱れが観察された。また、ポドゾーム構造自体への影響も認められた。』、『実験2.歯の萌出時の破骨細胞におけるIP_3R-III型の発現に関する実験:歯槽骨組織切片において歯の萌出経路形成に関わる破骨細胞でのIP_3R-III型の発現が認められた。』 萌出不全に伴う埋伏歯、萌出性腐骨といった萌出障害は小児歯科臨床において重要な課題であるが、その原因の一つである歯槽骨の骨吸収メカニズムは十分に解明されていない。本研究の結果により、IP_3R-III型と破骨細胞の細胞接着との関わりが局在の面からだけでなく、機能の面からも明らかとなり、骨吸収メカニズムの解明が大きく発展するものと考えられる。
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