低分子量ペプチドは合成が容易で、血液から速やかな消失を示すことから、様々なラジオアイソトープ(RI)標識ペプチドについて、その標的受容体を発現するがんに対するアイソトープ治療薬剤としての可能性が検討されている。しかし、いずれのRI標識ペプチドも投与早期から腎臓で非特異的な放射活性の滞留を示し、臨床応用への大きな障害となっている。そのような中、欧米で臨床使用されているRI標識オクトレオチドを対象に、医薬品の化学修飾による低減法について検討が行われた結果、医薬品の構造中に負電荷を導入することで、腎放射活性レベルを半分以下に低減できることが示された。これらの知見から、がん細胞に発現する標的受容体との結合能を維持し、非特異的な腎集積を低減できるRI標識オクトレオチド誘導体の開発を計画し、研究を開始した。 評価に供する2種のオクトレオチド誘導体ならびに、標的受容体への親和性を評価するための標準化合物として、3種のオクトレオチド誘導体の効率的な合成を固相合成法により達成した。これらの合成の際に、過去に1例しか報告のない合成法適用し、どの場合でも目的とするペプチド化合物が得られたことから、合成法の汎用性について有用な知見を得ることができた。次に、合成したオクトレオチド誘導体をRI標識するための最適条件を非RIを用いて検討し、RI標識を行うにあたり有用な知見を得た。また、標的受容体への親和性を評価するための最適条件を検討し、受容体への親和性評価において有用な知見を得た。 以上、5種のオクトレオチド誘導体の合成を達成し、RI標識の検討、標的受容体への親和性評価に対する検討を経て、21年度の研究の準備が整った。
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