低分子量ペプチドは合成が容易であり、血液から速やかな消失を示すことから、様々なラジオアイソトープ(RI)標識ペプチドについて、その標的受容体を発現するがんに対するアイソトープ治療薬剤としての可能性が検討されている。しかし、いずれのRI標識ペプチドも投与早期から標的組織だけでなく、非標的組織である腎臓にも高い放射能の集積・滞留するため、臨床応用への大きな障害となっている。そのような中、RI標識オクトレオチドの構造中に負電荷を導入することで、腎臓への放射能の集積を半分以下に低減できることが示された。これらの知見に基づき、がん細胞に発現する標的受容体との結合能を維持し、非特異的な腎集積を低減できるRI標識オクトレオチド誘導体の開発を計画した。 評価に供する5種のオクトレオチド誘導体の合成を固相合成法により達成した。得られたペプチドを^<111>Inで標識し、標的受容体を発現する細胞に対して取り込み実験を行い、合成したペプチドが標的受容体に対して親和性を維持しているかどうかを評価した。その結果、2つのペプチドは経時的に細胞内に取り込まれる傾向を示し、そのうちの1つは、コントロールとして用いたペプチドとほぼ同等の取り込みが観察された。 以上、合成およびRI標識したオクトレオチド誘導体5種のうち、構造中に負電荷を有し、標的受容体への親和性を維持した新たな化合物を見出した。
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