研究概要 |
我々は新規ALS原因遺伝子産物VAPBが哺乳類細胞においてUPRに関与し、P56S-VAPBはその機能が失われていることを見出した。さらに興味深いことにP56S-VAPB機能欠失型変異体であるのみならず、野生型VAPBの機能を報告した(Kanekura K et al., JBC2006)。我々は本年度VAPBの機能をin vivoで観察できる酵母モデルを確立し、P56S-VAPBがin vivoにおいても機能損失型変異体であることを示すとともに、P56S-VAPBがFFATモチーフ蛋白への親和性を失うと同時に野生型VAPBに対して異常に強い親和性を持つことにより野生型VAPBのみを容易に変異VAPB凝集体へ誘導することを見いだした。さらにルシフェラーゼアッセイを用いた解析によりVAPBのUPRシグナルは主にIRE1/XBP1経路を活性化することを明らかにし、またVAPBの機能にはVAPBのN末に存在するMajor Sperm Protein (MSP)ドメインおよびC末の膜貫通ドメインの両方が必須であることを確認した。非常に興味深いことにVAPBのMSPドメインに微小な欠損を任意の場所に導入するとP56S-VAPBと同様の表現系を示したことから、VAPBのMSPドメインの構造は非常に厳密に管理されており、微細な変異により強い凝集性を示し機能を損失することを確認した。また、P56S-VAPBの優性抑制性変異体の表現系をより詳しく解析し、MSPドメイン以外にC末端の膜貫通ドメインが不溶化する分子標的を認識していることを確認した。P56S-VAPBが本来のVAPBの機能を失い、かつ対立遺伝子の野生型VAPBの機能を抑制することにより運動神経細胞株NSC34細胞は小胞体ストレスへ脆弱となり、小胞体ストレス下にて容易に細胞死を起こすことを確認し、報告した(Suzuki et al,2009)。
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