VAPBによるUPR活性化機構にはdiphenylalanine in acidic tract(FFAT)モチーフを持つ蛋白が必須であることが予想されたため、我々は既知の14種類のFFATモチーフ蛋白のcDNAを全て入手し、VAPBとの結合をプルダウン法にて確認し、UPRシグナルへの関与を同定するためにルシフェラーゼアッセイおよびXBP1のスプライシングアッセイを行った。しかし、UPRに必須のFFATモチーフ蛋白が既知の蛋白から同定出来なかったため、未知のFFATモチーフ蛋白である可能性を考え、現在XBP1遺伝子を用いた新規スクリーニング法を開発中である。(2)FFATモチーフ蛋白を同定し得なかったことから、VAPBによるUPRシグナル機構を異なる側面から解明する必要があり、VAPBとERストレスセンサーとの関連を解明することを主眼とした研究を行った。哺乳類にはIRE1、PEPK、ATF6の3種のERストレスセンサーが存在するが、我々は進化の過程でIRE1とVAPBの遺伝的相互作用が普遍的に保存されていることに着目し、VAPBはIRE1特異的なシグナルに関与するとの仮説を立て検証を行った。IRE1欠損マウスおよびPERK欠損マウスの線維芽細胞にVAPB遺伝子を導入し、ルシフェラーゼアッセイを行った結果、IRE1欠損細胞において野生型VAPBによるUPRE支配下ルシフェラーゼの活性化が起こらなくなったことから、VAPBはIRE1を介してUPRシグナルに関与していることを明らかにした。また、野生型VAPBはIRE1経路の下流のUPREおよびERSE配列下流の遺伝子の発現を上昇させると同時に、PEPK経路下流であるATF4の発現に対しては抑制的に働くことを見出した。(3)ルシフェラーゼアッセイで得られた結果を元にリアルタイムPCR法およびウエスタンブロット法を用いた検討を行い、ALSを起こすP56S-VAPB変異は細胞死誘導性転写因子であるCHOPの発現を有意に上昇させることを見出した。 また、初代培養運動神経細胞を用いた細胞死アッセイの樹立に挑んだが、細胞導入効率の低さおよび遺伝子導入による神経毒性の問題により、有意な結果を得ることができなかったため、これについては次年度以降の課題としたい。
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