研究概要 |
大気環境中に多く含まれる多環芳香族化合物類によって引き起こされる発ガンプロモーションに関わるタンパク質の同定およびその発現機構の解明を目指して、これまでマウスの胚線維芽細胞(BALB/3T3細胞由来)を用いて多環芳香族炭化水素(PAHs)と含酸素PAHs(oxy-PAHs)のプロモーション活性試験を行い、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、1,2-ナフタレンキノンなどが強い活性を示すことを初めて見出した。前の2つのPAHsは強いAhR活性を示す物質であり、また3つのいずれの物質も活性酸素種(ROS)を生成することが予想され、これらの経路がプロモーション活性と関連することが示唆された。また、ジベンゾ[a,l]ピレン、ベンゾ[a]ピレン、多くのoxy-PAHsは細胞毒性が高く、細胞毒性と関連する細胞増殖抑制がプロモーション活性に影響することが予想された。これらの結果についてはH.21年度に学会発表する。今後、各物質のROS産生能を過酸化脂質の定量などを用いて確認し、AhR活性やROS産生能とプロモーション活性との関連性を調べる。また、ニトロPAHsに対してもプロモーション活性測定を進め、プロモーション活性を顕著に示す物質を絞り込む。そして、活性の強い物質によって暴露された細胞から誘導されるタンパク質をLC-MS/MSを用いて網羅的に同定し、プロモーション活性に関わる新たな機構の手掛かりを見出す予定である。
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