インプラントサポーテッド部分床義歯(以下ISRPDとする)による補綴治を予定している患者に対して、CT撮影を行った。この結果からインプラントの形態を決定し、また実際にISRPDを製作した。引き続きインプラント体とISRPDをμCT撮影し、ISRPDを装着した三次元有限要素モデルを構築した。 荷重のインプラント埋入の有無でISRPDおよび支台歯の変位を分析した。 ISRPDの変位の大きさを(1)床最遠心部、(2)インプラント埋入部、(3)ISRPD寄りのクラスプ先端部、(4)ISRPDから離れた部位に設定したクラスプ先端部、(5)ISRPDと歯の接合面の計5箇所で計算し、また支台歯の変位の大きさをISRPDのクラスプが設置される(6)第2小臼歯部、(7)第1小臼歯部、(8)犬歯部の計3箇所で計算した。 その結果、インプラント埋入によりISRPDの変位量は大きく減少することが明らかになり、各測定部における変位量はインプラント埋入後(1)23%(2)28%(3)27%(4)52%(5)39%となった。支台歯の変位の大きさも同様に減少し、それぞれの測定部位において(6)27%(7)35%(8)40%となった。 過去の研究において実際の患者から得られる複数の要素のCTデータを用いて構築された三次元有限要素モデルを用いて機能時の義歯の挙動を解析した研究は見あたらず、本研究において構築したモデルは、使用されるインプラント体や実際に設計、製作されたISRPDをモデルに組み込み、患者から得たデータを基盤とした初めてのシステムであると考えられる。これにより治療前に、患者ごとに最適なシミュレーションを行うことが可能となり、実際の治療後の予後を追跡しデータを補充していくことで、このシステム自体も今後より臨床に即したシミュレーションが可能となり、ISRPDの臨床応用への糸口となることが大いに期待できる。
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