Community-Based Participatory Research(以下、CBPR)の手順により以下の3点を実施した。 1.運営委員会の設立と健康課題の明確化:埼玉県蕨市内にあるフィリピン人女性のNGO、KAFINと協働し運営委員会を設立した。35歳以降のフィリピン人女性の健康課題について運営委員会で検討し、「乳がんの早期発見」に焦点をあてた。研究者主導ではなく、当事者の意見を尊重し、健康課題を定めたことにより、当事者の主体的な参加につながった。 2.研究のすすめ方に関する研究者と当事者との葛藤を乗り越えたプログラムの実施:異なる立場の人たちが参加するCBPRでは参加者間の葛藤が生じやすいことが一つの課題である。本研究においても、研究者は、はじめにインタビュー調査の実施を希望したが、NGOリーダーは、単なるインタビューではなく参加者が何らかの知識を得られるプログラムを希望した。そこで、話し合いを重ねながら課題を克服し、当事者の利益や希望を優先し試行的な乳がんの早期発見のための健康教育プログラムを開発・実施した。試行的プログラムには20名のフィリピン人女性が参加し、参加者からも好評を得て、このプログラムを各地に普及する足がかりを得た。 3.パートナーシッププロセスの中間評価:CBPRにおいては、参加者とのパートナーシップが重要である一方で、どのように評価するのかが課題となっている。本研究では、「地域保健活動におけるパートナーシップ」の概念分析を行い、その結果をもとに、パートナーシップのチェックリストを開発し、運営委員会でパートナーシッププロセスの中間評価を行った。その結果、パートナーシップ開始前の健康課題の特定に関する情報が不足していることが明らかになった。
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