本研究は、看護技術の中で特に巧緻性の高い静脈注射技術に着目し、(1)フレッシュナースにおける末梢からの血管確保技術の教育的介入方法を検討(2)フレッシュナースに対しエキスパートナースによる教育的介入を実践(3) フレッシュナースの血管確保の技術習得を実験的に検証することを目的としている。このうち、平成20年度に(1)を検討し以下3点を平成21年度実施する教育的介入プログラムに踏まえるに至った。(1)フレッシュナースは血管確保技術の「手順」を備えるためにエキスパートナースによる正しい手順を示したデモビデオを繰り返し視聴する。(2)フレッシュナースは血管確保実施後、自身の録画記録を視聴し自己の課題を確認する。(3)エキスパートナースは正しく「留置針を血管内に刺入する」ための血管怒張や刺入部位選択の技術および内針は固定しつつ外針を挿入するという留置針の巧緻性に関わる教示を強調するよう事前の打ち合わせで伝える。平成21年度、フレッシュナースに対する教育効果を検証するため、無作為化比較試験を行った。その結果、血管確保の成功率は対照群20名中6名(30.0%)に対し、介入群は21名中9名(42.9%)であった。血管確保の失敗要因は、フレッシュナースの最も重要な課題に関連した「刺入時に血液の逆流なし」が対照群14名中11名(78.6%)に対し、介入群は12名中6名(50.0%)であり、エキスパートナースの介入を主とした教育的介入に一定の効果を認める結果であった。フレッシュナースと医療現場に求められる看護技術の乖離が問題となる中、看護技術の中で最も巧緻性が高い留置針を用いた血管確保技術向上を目指し、効果が検証された研究意義は大きい。
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