日本におけるBA (bongkrekic acid)毒素産生菌の分布状況を明らかにするために、国内農業環境でのB. gladioli pathovar cocovenenansの生息調査を行った。農業環境から分離されたB. gladioli菌株41株について、毒素産生能をB. gladioli菌種特異的PCR法とBA毒素エーテル抽出法にて解析した。その結果、稲の苗由来の5株がBA毒素産生能を有していることが明らかとなった。日本国内の稲作環境からBA毒素産生株が検出されたことにより、国内でも広範囲に分布していることが予想され、食中毒発生の危険性が危惧される。 また、BA毒素の生体への作用を調べるために、マウスへの投与実験を行った。B. gladioli pathovar cocovenenansの培養上清からエーテルにより抽出したBA毒素をHPLCで分析しマウスに投与したところ、亜急性にマウスを死亡させる結果が得られた。BA毒素の作用メカニズムを探るため、毒素接種後に死亡したマウスを解剖して臓器を観察すると、BA毒素投与マウスはコントロールと比較して明確に胃の膨張が確認された。BA毒素はミトコンドリアでのATP産生を抑制する働きが知られているため、胃の運動を抑制し胃に餌や空気が溜まったと推定される。BA毒素の生体への作用メカニズムを明らかにすることは食中毒の予防・対策につながると考えられるため、今後より詳細に検討する必要がある。
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