本研究の目的は、出生時カンガルーケア中の新生児の呼吸循環適応の変化の過程を検証し、新生児にとって安全なカンガルーケア実施のためのエビデンス確立を目指すことである。 平成21年度は、出生直後にカンガルーケアを実施した群(実施群)16例および出生後新生児を着衣させた後で両親との面会や抱っこ、授乳等を行った群(対照群)18例、計34例のデータ収集を行った。内容は生体モニター(DASH3000、オムロンコーリン)を用い、生後1~2時間における心拍数、呼吸数、経皮酸素飽和度、体温の経時的変化のデータに加え、新生児の心電図RR間隔の心拍変動解析による、出生直後の新生児の自律神経機能の変化についてモニタリングを行った。これらの結果から、出生直後の新生児の呼吸循環適応の過程にはいくつかのパターンがあることが明らかになった。交感神経、副交感神経の活動は、出生後約20分以内を除いて、抱っこや吸啜など新生児の行動により変化が見られた。また分娩中の分娩監視装置の胎児心拍所見と出生後の呼吸循環適応過程との比較検討により、迷走刺激反射による胎児心拍数の変動が、胎児の自律神経活動に影響し、新生児の出生直後の呼吸循環確立に影響を与えている可能性が示唆された。 これらの結果をふまえ、今後は妊娠末期の胎児の自律神経活動の発達および分娩中の胎児の自律神経活動の変化についてのデータ収集を行い、出生直後の新生児の自律神経活動および呼吸循環適応過程との関連性を検証することにより、胎児期の自律神経機能の発達と、分娩中の自律神経活動の変化から、出生直後の新生児の呼吸循環適応過程を予測するなど、より新生児に安全な出生直後のケアの提供ができるよう研究を継続していく予定である。
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