地域において、性に関連した問題行動(性器いじり、不適切な場所でのマスターベーションなど)が確認されている知的障がい者は4人に1人という報告もあり、生涯における性の支援の必要性が問われている。しかしながら、知的障がい者施設では職員が性行動の対処について悩んだ経験があるにも関わらず、性について話し合う機会は少なく、指導方法については適切なマニュアルや教則本がないため、苦慮している現状も明らかになっている。 そこで、平成21年度は、知的障害者施設の職員を対象とした支援マニュアル「知的障がい者の支援に生かす生活を支援する時の本」を作成した。この冊子は、性を生殖と捉える狭義の意味ではなく、広義の意味として、生活やお金の支援の中で捉えている。近年、携帯電話のアダルトサイトによる架空請求、交際による金銭トラブルに知的障がい者が巻き込まれることも多く、性の支援は生活の支援に直結していると考えたためである。この冊子は、序章として学齢期・思春期の性教育から始まり、成人期を中心に性的問題行動の支援、異性への関心、金銭管理、出会いと恋の支援、結婚・出産、死生にわたる人生のライフイベント毎に、実際のケースをまじえながら、支援方法について記載している。また、作成した冊子は、全国の知的障害者通勤寮(以下:通勤寮)110ヶ所、障害者就労・生活支援センター(以下:就労・生活支援センター)205ヶ所、無作為抽出による知的障害者授産施設(以下:授産施設)300ヶ所の合計615ヶ所に、質問紙(性の実態および冊子評価の調査)とともに2009年1〜2月に送付した。冊子と質問紙は、通勤寮と就労・生活支援センターには1部ずつ送付し、授産施設には冊子2部と質問紙4部を送付した。回収率は36%、回収数は356部であった。
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