申請者は本年度において、樹状細胞などの免疫系細胞における糖鎖シグナルの制御機構を明らかにすることを目的としている。これまで申請者らは、樹状細胞上に発現する膜貫通C型レクチンDC-SIGNが、結腸がん細胞上の糖鎖抗原を認識することで樹状細胞の機能が抑制され腫瘍免疫の抑制が起こることを初めて明らかにしている。そこで本年度では、まずアフィニティークロマトグラフィーを用いて結腸がん細胞株COLO205上に発現する主要なDC-SIGNリガンドを同定した。またDC-SIGNとリガンドの結合には従来血液型関連糖鎖として知られているルイス型糖鎖が重要であることをN-グリカナーゼ、フコシダーゼ等を用いた糖鎖消化実験にて明らかにした。現在、DC-SIGNを安定発現させた単球系細胞株U937を作製し、LPSやDC-SIGNリガンド添加時におけるサイトカイン分泌の変化をみる実験等を検討しており、今後DC-SIGNによる腫瘍免疫への関与を分子レベルで調べる。次に申請者らは、O-結合型の二糖構造Galβ 1-3GalNAcを特異的に認識するレクチンJacalinが、CD45分子をB細胞上の主要なレセプターとすることを明らかにした。さらに、JacalinはCD45との結合を介してCD45のチロシンホスファターゼ活性を阻害しB細胞をアポトーシスへと誘導することを示し、アポトーシスにはCD45の活性阻害によるLynの活性化、細胞内カルシウム濃度の上昇に伴うカルパインの活性化が関与することを明らかにした。これらの結果より、JacalinによるCD45の機能制御および細胞内シグナル調節機構はCD45の生理的意義を理解する上で重要であると考えられる。以上、本研究は平成20年度において多くの知見を得ることが出来た。
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