我々は本年度において、免疫系におけるC型レクチンの作用機序の解明を目的とした研究を行った。これまで我々は、樹状細胞上に発現する膜貫通C型レクチンDC-SIGNが、結腸がん細胞上の糖鎖抗原を認識することで樹状細胞の機能が抑制され腫瘍免疫の抑制が起こることを明らかにし、結腸がん細胞上の新規DC-SIGNリガンドを同定している。本年度では、DC-SIGNを安定発現させた単球系細胞株U937を用い、LPS添加時におけるIL-6、IL-10、TNF-αの分泌へのDC-SIGNの寄与を明らかにした。この結果は細胞内においてToll様受容体とDC-SIGNのシグナル経路がクロストークすることを示唆する。また、結腸がん患者由来の組織を染色することにより、DC-SIGNリガンドの発現パターンを詳細に明らかにした。以上の結果はDC-SIGNが結腸がんの診断に応用できる可能性を示すものである。さらに我々は、血清マンナン結合タンパク質(MBP)が、細菌由来ゲノムDNAを始めとする種々のDNAにカルシウム依存的に結合することを明らかにした。分子間相互作用解析により、MBPは二本鎖DNA、一本鎖RNA、一本鎖DNAの順に高い親和性を示すことが明らかとなった。また、MBPとDNAの複合体はレクチン経路による補体系の活性化を引き起こさず、DNAをコートしたビーズはファゴサイトーシスの促進を受けないことから、補体成分の沈着がファゴサイトーシスには重要であることを示した。さらに、MBPはアポトーシス細胞表面に露出したDNAを認識することから、この機構が生細胞とアポトーシス細胞の識別に寄与している可能性が考えられた。以上の結果はDNAのクリアランス機構および生体防御におけるMBPの機能を考える上で重要である。以上、本研究は平成21年度において多くの知見を得ることが出来た。
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