内因性ガスメッセンジャーである硫化水素の膀胱炎および膀胱痛への関与を明らかにするため、平成20年度は、シクロホスファミド誘起膀胱炎モデルの作製と炎症・痛みの評価系の確立と本モデルを用いた基礎的研究を行った。 1)シクロホスファミド誘起膀胱炎モデルの作製と炎症・痛みの評価系の確立: 本膀胱炎モデルマウスにおいて疼痛関連行動および関連痛覚過敏の評価系を確立し、炎症関連症状として、浮腫、血管透過性亢進、病理切片上の形態学的変化をとらえることに成功した。 2)シクロホスファミド誘起膀胱炎モデルにおける疼痛関連行動、機械的関連痛覚過敏ならびに炎症症状に及ぼす薬物効果の検討: 本モデルにおいて、硫化水素合成酵素の1つであるシスタチオニン-γ-リアーゼ(CSE)の阻害薬であるDL-propargylglycine (PPG)およびT型Ca^<2+>チャネル阻害薬であるmibefradilが、疼痛関連行動や関連痛覚過敏を抑制することを証明した。さらに、PPGは、炎症関連症状にも部分的に抑制効果を示すことを明らかにした。 3)シクロホスファミド誘起膀胱炎モデルのび膀胱組織中CSEタンパク発現量などの測定: 本膀胱炎モデルマウスの膀胱組織においてCSEタンパクの発現誘導が起きていることを見出した。 以上の結果より、本モデルにおいて、CSEタンパクの発現誘導により硫化水素の産生が増大し、これがT型Ca^<2+>チャネルを介して膀胱痛の発現に関与すること、また、硫化水素は本モデルの一部の炎症症状にも関与することを示唆する知見を得ることできた。
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