Interleukin(IL)-6関連サイトカインは心筋組織傷害後の修復・再生において重要な役割を演じているが、それらの多くは全身性に炎症反応を誘発することが知られており、臨床応用するのが難しいと考えられる。IL-6関連サイトカインの中のIL-11は、血小板減少症治療薬として米国で認可され、既に臨床応用されていることより、本研究では、IL-11の心不全発症予防薬としての臨床応用の可能性を検討するため、サイトカインによる心筋における内因性の保護・修復・再生機構を賦活化することによる、新たな心不全発症予防戦略の確立を目的とし、 i)心筋梗塞モデル動物に対するIL-11の効果(生体レベルでの確認)について検討を行った。 その結果、心筋梗塞モデルマウスにIL-11を静脈投与したところ、細胞レベル同様、心筋においてSTAT3が活性化されることを確認した。心機能は、心筋梗塞後に起こる心機能の悪化をIL-11投与により抑制されること、組織学的変化において、IL-11投与群では心筋細胞の線維化(心不全の前段階で多く観られる現象)が無処置群に比べ抑制されていた。更に、分子生物学的評価方法により、IL-11が投与された心筋ではアポトーシスを起こしている細胞数が無処置群に比し、減少しており、この時、IL-11投与群では、Bcl-2(アポトーシス抑制蛋白)が心筋で発現上昇していることを確認できた。 以上のことより、IL-11がヒト心筋組織の保護・修復・再生促進作用の可能性を示唆し、本研究が心不全発症予防薬としての臨床応用に向けた基礎研究成果を提示するものと考えている。
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