慢性腎臓病は末期腎不全、透析導入とともに心血管疾患の原因でもある。その病態機序に血管内皮機能障害の存在が確認されている。我々は、尿毒素(インドキシル硫酸)の蓄積が血管内皮機能障害を引き起こすとの仮説を立て、経口吸着療法による尿毒素の除去が血管内皮機能障害を改善し得るかについて検討した。腎不全モデルとして5/6腎摘ラットを作製、2週間経口吸着剤を投与後、大動脈の内皮依存性血管弛緩反応を評価した。対照群として偽手術ラットを用いた。得られた結果は以下の通りである。 1、偽手術ラットと比較し、5/6腎摘ラットでは体内のインドキシル硫酸の蓄積が認められた。また、経口吸着剤投与はその蓄積を抑制した。 2、偽手術ラットと比較し、5/6腎摘ラットで内皮依存性血管弛緩反応は低下していた。2週間の経口吸着剤投与により、腎機能非依存性に内皮依存性血管弛緩反応は改善した。 3、内皮依存性血管弛緩反応の低下はインドキシル硫酸の蓄積と相関していた。また、正常ラットの大動脈にインドキシル硫酸を作用させると、内皮依存性血管弛緩反応は低下した。 4、偽手術ラットと比較し、5/6腎摘ラットの大動脈組織では、酸化ストレスの亢進が認められた。また、経口吸着剤の投与により酸化ストレスの亢進は抑制された。 以上の結果から、腎不全時の尿毒素の蓄積は血管内皮機能障害を引き起こし、経口吸着剤による尿毒素の除去は血管内皮機能障害を改善させることが明らかになった。本研究により、経口吸着療法は、慢性腎臓病における心血管疾患の発症を予防する可能性が示唆された。
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