インドール、ベンゾイミダゾール、キノリン誘導体などは、抗がん・抗ウイルス活性などの興味深い生物活性を示す複素環群であり、有用なファルマコフォアである。今回、抗HIV活性を示すキノリノン誘導体の創製を目指し、研究に着手した。その結果、4位に水酸基、3位に種々の置換基(ホルミル基、トリフルオロアセチル基など)を有するキノリノン誘導体の簡便かっ一般的な合成法の確立に成功した。シアノ酢酸アニリドのタンデム型官能基化-環化反応を利用した合成である。本手法による合成は以下のような利点を有する。(1)入手容易なシアノ酢酸アニリドを利用できるため、多様な置換基を有する誘導体の合成が可能である(2)シアノ酢酸アニリド誘導体のC-H官能基化を利用しており、廃棄物が少ない環境調和型の合成である(3)生成物が沈殿物として得られ、生成物の単離・精製を容易に行うことができ、スケールアップも容易である。また、本反応によって得られる生成物を天然物であるグリコシトロン類へと誘導することにも成功した。さらに本手法は、ペンタフルオロエチル基やヘプタフルオロプロピル基などのパーフルオロアルキル基を有するキノリノン誘導体の合成にも応用することができた。キノリノン誘導体はこれらの置換基の導入により、(1)脂溶性が向上し、吸収・輸送、あるいは受容体との相互作用が改善する(2)芳香環や複素環の電子密度を低下させ、受容体に輸送されるまでの間、酸化反応などによる分解が抑制され、その結果、副作用が低減するなどの効果の発現が期待される。
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