研究概要 |
本年度はLPS誘導性SIGIRR発現制御機構の解明を行った。まず、内在性TLR4を発現するRAW264.7および好中球様HL60をLPSで刺激したところ、経時的かつ濃度依存的にSIGIRRのmRNA発現量が低下した。次に、RAW264.7にマウス変異TLR4のHeJ TLR4を発現させた後LPSで刺激したところ、SIGIRR mRNAの発現抑制が完全に消失した。更に、HEK293にTLR4/MD-2/CD14を発現させLPS刺激後のSIGIRRタンパク質発現量を検出したところ、TLR4/MD-2/CD14発現細胞においてのみSIGIRRの発現量が減少した。これらの結果から、LPS誘導性のSIGIRR発現抑制はTLR4シグナルを介することが明らかとなった。次にMAPキナーゼ、NF-κBおよびPI3Kに対する各種阻害剤をRAW264.7および好中球様HL60に処理して検討を行ったところ、両細胞共にp38阻害剤を前処理した場合にのみLPSによるSIGIRR発現抑制効果が減弱した。更にp38活性化剤のアニソマイシンを処理したところSIGIRR mRNAの発現が低下した。これらの結果から、LPSによるSIGIRR発現抑制はTLR4シグナル下流のp38を介する可能性が明らかとなった。また,LPSによるSIGIRR mRNA発現抑制はmRNAの分解促進によるものではないことを確認しているため、今後LPS刺激によるSIGIRRプロモーター活性への影響とp38との関連性を中心に検討を行う予定である。本研究の成果は、TLR4シグナル抑制分子SIGIRRのTLR4シグナルによる発現制御機構の一端を解明し、新たな炎症制御メカニズムの可能性を提起する重要な知見である。
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